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(2017-06-23更新)
数年前、「私立医学部を進学先として真剣に考えたい」息子にそう言われました。国立大学の合格発表はまだでしたが、既に1浪中であった息子は2浪が決定したと判断。その時点での言葉です。
2浪するにあたり、家族としてどういう方向に進むべきか決断する時が迫っていました。今、私立大学の医学部で充実した日々を送っている息子の様子を見ると、あの決断で良かったと思っています。
現役時代の生活
どれだけのん気なの?息子
息子は高校入学の時には既に将来の仕事を医者と決め、医者になることしか考えていませんでした。それなのに・・・。
これは、本人の性格なのか、田舎の空気なのか、高校3年生の夏休みが始まる前までスポーツばかりやっていて、どう考えても単純に勉強不足。
難関と言われている医学部を目指すのですから、本気で合格したいなら、次の大学入学に向けて走り出すような勢いが必要です。でも、息子にその感覚は、全くありませんでした。
サッカーばかりの高校時代
通学に片道1時間30分。1日3時間も通学にかかるというのに、部活動はサッカー。強いとかそういうことじゃないですよ。ただ好きなだけ。
毎日毎日ボールを蹴っていました。土日はもちろん試合。勉強する時間はどこに?
はい、ありません。もともと本を読むことは大好きなので、家にいる間は本を読み、歌も好きなので、歌番組もチェック。そうそう、ピアノもまだ習っていました。その頃。
1年生の懇談会時に、担任の先生に、生活の様子を話したら、「まあ・・・」と呆れたような感心したような・・・。それでもその頃は上位3分の1位のところにはいたのでその反応で済んだと言うか。
「なんとかこのまま勉強も続けられるといいですね~。3年生で伸びる人と言うのは、それまでずっと勉強を続けていた人ですからね~。」
今でもその時の会話を思い出します。
現役合格を目指すという感覚が正しい
親としても2浪は必要かなと思っていた甘い考え
夫も私も2人とも浪人経験者なので「浪人」ということに抵抗感がありませんでした。
今考えるとそれも大問題でした。
浪人することへの抵抗感。バブル前からバブルにかけての感覚と今では全く違います。浪人すればいいという感覚は古い。どうしてそれを自覚できなかったのでしょう。
とは言え、今の私でも、当時の私の考えを改めさせるのは難しかったかも。
勉強ができないのなら、できるまで時間をかければいい、慌てる必要はないと思い込んでいる人に、考えを変えなさいと言っても簡単に変えられるものではありません。
今予備校の動きを見ていると、高卒者に力をいれるのではなく、現役の高校生に力を入れています。経済的な事情で浪人しなくなって、経営が成り立たなくなったという事情はありますが、それ以外にも理由があります。
現役生の方が合格しやすい?
模試が終了する秋以降も、現役生は成績がぐーんと伸びます。
昔から言われることです。高校生としていろいろやってきて、勉強時間も限定的だったのに、やっと勉強ができる!そして時間はない!なんとかしなければという切迫感が生み出す集中力はすばらしい。
だから、伸び率が全く違います。それは本当です。でもそれだけとも思えません。
現役生には、びっくり合格が起こりますが、2浪生にはまず起こりません。
浪人はすればするほど不利に
発表シーズンになると明らかです。あの子が?という子まで受かってしまう現役生。模試では、その子よりずっと成績の良かった浪人生。その人たちがごっそり落ちてしまいます。
医学部志望者には多浪が大勢います。3浪とか4浪とか、一般の世界ではほとんどお目にかかったことがありませんが、医者志望者となると、全然珍しくありません。
そして、年を取ればとるほど受かりずらくなっているという印象です。私が知っている中にも現在8浪目という人がいます。
そういう現実を見ると、できるだけ若い子を合格させたいという大学側の思いがないとも思えないのです。
もっともこれは、医学部だけではありません。一般企業の採用も同じです。若い=頭が柔軟=育てがいがある。
キャリアが全くない人の採用で、年齢以外が同条件なら、若い方を採用する。違いますか?
医学部の場合は、国家試験があります。あれだけ膨大な事柄を暗記しなければならないのです。もし、合格率を上げたいなら、できるだけ若い頭脳を集めたほうが合格率は上がる。そういう判断をしているのかどうか別として、それは事実です。
各大学とも、医師国家試験の合格率を上げること、ランキングを上げることにしのぎを削っています。思考の前に膨大な暗記があってこその試験。
20代の集団の指導と30代の集団の指導どちらが有効でしょう?聞くまでもないですね。
さらに一人歩きできる頃には30歳になってしまうという現実
医学部の場合は、大学、国家試験、研修医と一人歩きができるまでに相当な時間が必要になります。普通に考えても、30歳くらいに。
例えば、息子。2浪なので、入学したその年に21歳。それに6年足して、27歳。それから前期研修2年、後期研修数年(科によって異なります)。軽く30歳を超えます。
実際は留年する人もいれば、国家試験に落ちる人もいるので、それ以上の覚悟が必要です。
もし自分が患者にだったら?
30歳の若い先生が担当医になったら、不安で一杯。どう考えても1人前じゃないですから。
実際は、ベテランの先生が指導してくれているので大丈夫ですが、患者の評価なんてそんなものです。命に係わる手術を、そんな先生に「お願いします。」って言えますか?
安心感が出てくるのは、一体何歳からなんでしょう。道は長い・・・。
若いうちに医学の道に入るのがベターなのだから、早く合格しないと・・・
医学部は、早く合格しなければどんどん受かりずらくなります。そういう事実から目を背けていたことはやはりまずい。
いくらネットで情報を得られるとは言うものの、地方の高校生はこのあたりを実感として感じるチャンスがほとんどありません。例えば、友達と予備校の説明会にちょっと行ってみる。この「ちょっと」の場があまりに足りないのです。
しかも、成績に自信のある人は国立医学部を躊躇なく受け、普通に合格してしまいます。
医学部は特殊な試験ではありません。勉強のできる生徒は普通に合格するということを現実として見せてくれます。地頭の良さと計画的な学習で医学部に合格していく人たち。息子とはそもそも話が合うわけがありません。そういう子たちからもやっぱり情報は入ってこないのです。
この時は、前途多難ということさえ、よくわかっていなかったのでした。