「大学入学共通テスト」と「学力の3要素」

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大学 入試

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現在中学3年生は、「大学入学共通テスト(仮称)」の最初の受験生です。不安に思っている人多いですよね。なぜ、今教育改革なのか、文部科学省の考え方を紹介します。

大学入学共通テスト(仮称)の実施方針案が公表されました。なぜ大学入試改革を?

文部科学省は、大学入試改革に向けて動き出しています。

5月16日には、2020年度から始まる「大学入学共通テスト」(仮称)の実施方針案が公表されました。

2020年度、現在の中学3年生が最初の受験生になります。

実施案の一部です。

  • 英語 民間試験で、実用英語技能検定(英検)やTOEFLなどを選択して受け、「読む・聞く・話す・書く」を評価。大学入試センターの試験は廃止します。
  • 国語数学 マークシート式と記述式で構成されます。記述式は、問題例が示されました。採点は民間業者に委託される予定です。

国語の記述式問題については、3問出題で、以前より字数の検討が行われてきましたが、80字から120字程度の問題が含まれます。試験時間も今より20分長くなります。

大学入試センターの大杉住子・審議役は国語の問題について「根拠を題材から拾ったうえで、考えを自分で発展させてまとめなければいけない」と出題の狙いを説明する。(5月17日朝日新聞)。

さて、センター試験からこの共通テストへ移行する理由はどこにあるのでしょうか?

「学力の3要素」を大学入学共通テスト(仮称)でどう評価?

教育改革では「学力の3要素」を身に着ける力としています。

  1. 知識・技能
  2. 思考力・判断力・表現力
  3. 主体性多様性協働性

文部科学省では2020年から2030年ぐらいかけて教育を変えていこうとしています。学力の3要素のうち、従来最重要視していた、けれども今後は人工知能に変わっていくと予想されるような1.知識・技能だけをテストで評価するのではなく、それ以外の部分、つまり2.思考力・判断力・表現力、3.主体性・多様性・協働性、この3 要素全てを大学入学共通テスト(仮称)でどう評価していくかが課題です。

さて、その改革をどう進めていこうとしているのかがわかる資料がこちらです

高大接続システム改革会議「最終報告」

Ⅰ 検討の背景と狙い

これからの時代に我が国で学ぶ子供たちは、明治以来の近代教育が支えてきた社 会とは質的に異なる社会で生活をし、仕事をしていくことになる。国際的にはグロ ーバル化・多極化の進展、新興国・地域の勃興、産業構造や就業構造の転換、国内 では生産年齢人口の急減、労働生産性の低迷、地方創生への対応等、新たな時代に 向けて国内外に大きな社会変動が起こっているためである。

〇これからの時代に向けた教育改革を進めるに当たり、身に付けるべき力として特 に重視すべきは、(1)十分な知識・技能、(2)それらを基盤にして答えが一つ に定まらない問題に自ら解を見いだしていく思考力・判断力・表現力等の能力、そ して(3)これらの基になる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度である。 これからの教育は、この(1)~(3)(これらを本「最終報告」において「学力 の3要素」と呼ぶ。)の全てを一人一人の学習者が身に付け、予見の困難な時代に、多様な人々と学び、働きながら、主体的に人生を切り開いていく力を育てるものに ならなければならない。

小中学校については、近年、各学校において指導の改善が進み、 改革の成果が上がってきていると評価されており、2012年に義務教育修了時点 の生徒を対象に実施されたOECD「生徒の学習到達度調査(PISA)」でも、 我が国の子供たち全体の成績は国際的に高い水準となっている。

高等学校については、中学校卒業後約99%の生徒が、多様な高校入試を経て多 様な設置形態を持つ高等学校等に進学している。この状況の中で、生徒の興味・関 心、能力・適性等の多様化に対応して、義務教育段階の学び直しや、グローバル化 への対応、高い専門性の育成に取り組むなど、各校の特性に基づいて魅力ある学び を創出する取組が進められている。 その一方で、学力の3要素」を踏まえた指導が十分浸透していないことが課題 として指摘されており、その背景として、現状の大学入学者選抜では、知識の暗記 ・再生や暗記した解法パターンの適用の評価に偏りがちであること、一部のAO入 試や推薦入試においては、いわゆる「学力不問」と揶揄 されるような状況も生じて いることなども指摘されている。

このような状況の下で、特に高等学校教育及び大学教育の改革の断行は、我が国 にとって焦眉の急である。また、大学入学者選抜は、本来の役割を超え、実態とし て高等学校教育以下の初等中等教育と大学教育とに大きな影響を与える存在となっ ている。このため、高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜の一体的改革を「高 大接続システム改革」と位置付け、一貫した理念の下、これを推進する必要がある

文部科学省 高大接続システム改革会議「最終報告」(平成28年3月31日)より一部抜粋

 

大学入学共通テスト(仮称)」に変更する理由・・・わかりやすく言うと

これからの子供は、予想もできない今までとは異なる社会で生活し、仕事をしていくことになる。

だから学力の3要素を身に着けることで人生を切り開いていかなければならない。

  1. 知識・技能
  2. 思考力・判断力・表現力
  3. 主体性多様性協働性

小中学校では、指導改善が進み、改革の成果が上がってきており、PISAでも国際的に高い水準の成績となっている。

一方で高等学校では、学力の3要素を踏まえた指導が行き渡っていない。その背景に、大学入試での暗記重視の評価やAO入試・推薦入試で学力が問われない、といったことがある。

だから高等学校や大学の教育改革は緊急性が高く、それまでの教育に大きな影響を与える高校、大学、大学入学者選抜の一体改革を推進する。

さて、ここで言う小中学生の学力ですが、15歳の生徒を対象にOECD加盟国で行っている「OECD生徒の学習到達度調査」結果が一つの目安になります。

※高大接続システム改革会議「最終報告」時点では、2012年の調査。

2012年調査(2013年12月発表) 参加国65か国・地域 約51万人の生徒

  • 数学的リテラシー 7位
  • 読解力 4位
  • 科学的リテラシー 4位

2015年調査(2016年12月発表) 参加国72か国・地域 約54万人の生徒

  • 数学的リテラシー 5位
  • 読解力 8位
  • 科学的リテラシー 2位

2015年では、読解力を落としてはいるものの、小中学校では、国際的に見て高い学力を維持していると言えます。この読解力については、早速対応策が考えられいます。

いずれにしても、高等学校以降の学習に問題があることは事実であり、次は高等学校の学習について考えてみます。

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