
この記事は7分で読むことができます。
世の中は移ろいやすいもの。でも、人工知能(AI)の発達による生活の変化は想像を超えます。10年後20年後、今までと同じように仕事をしようと思っても、その仕事自体がない。既に始まっています。現実です。だから、教育を変えなければならない。日本は小中学校の教育をどうしようとしているのでしょう?
人工知能(AI)の時代に、私たちの生活はどうなるか?
〇米マイクロソフト社が人工知能を使用して、発表用に使うソフト「パワーポイント」に同時翻訳の機能を付けると発表(5月10日)
〇米グーグルが人工知能搭載の音声認識スピーカー「グーグルホーム」を今年中に日本で発売予定。(米国では129ドルで発売中。)(5月19日)
〇人工知能と将棋の棋士が戦う電王戦で佐藤天彦名人が連敗。(5月20日)
日常的に耳に入ってくる人工知能のニュース。そのたびに何となく落ち着かない気分になります。
生活の中に入り、世の中が変わる兆し、という感じでしょうか。。
2045年には、人工知能が人類を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」に達し、予測が付かない世の中がやってくるという説があります。人工知能が人を動かす社会到来?
楽でいいのでしょうか?では、人は何をやるのでしょう。誰かの役に立たないって悲しい・・・。
だから学校の教育が変わる。文部科学省の考え
文部科学省は、こうした未来に対処するため、学校教育を変えようとしています。今までの教育ではどうにもならないから。日本の教育がこれからどう変わろうとしているのか、文部科学省の意向を知ることは大切なことです。
文部科学省はホームページを見てみました。さて、注目すべきは?
これです!「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」。
中央教育審議会が、次期の学習指導要領に向けて昨年まとめたものです。ちなみに、学校はこの「学習指導要領」を基準として、教科の指導を行っています。日本の教育を語るとき、学習指導要領は基本中の基本、先生方は、日々、これに基いて授業をしています。
それともう一つ、中央教育審議会(中教審)というのは、教育についての最も重要な内容を文部科学大臣に「どうですか?」と提案するところです。大臣は中教審から提案されたことは、政策に生かします。だから、この文書を読むと、近い将来の教育が見えてきます。
これからの子どもたちの教育は
どんなことが書かれているのか、特に人工知能に関連したところを簡単に紹介します。(詳しくは、ページ下に掲載)
20年後の世の中は、人工知能が生活の中に入り込み、様々な判断をしたり、インターネットを通じていろいろなものを適切に動かすようになります。仕事の自動化は進み、今の子供たちの半分以上は、現在予想ができない仕事に就くことに。
でも、人工知能に頼りっきりとはなりません。あくまで、人工知能は処理です。人間は、処理能力とは別の部分、つまり、考えをまとめたり、相手によって言葉を変えたり、仲間と力を合わせて新しい答えを見つけたりする力があるのです。
2020~2030年代までに、未来に必要となる力を付け、予測できない未来であっても積極的に立ち向かっていける子どもたちを育てることが重要です。
大学入学共通テスト(仮称)にも連なる考え方
大学入学共通テスト(仮称)、近年センター試験からこの共通テストに変わるということで、何かと話題です。面倒なやり方で、なぜ無理してでもやろうとしているのでしょうか?
それは、未来の社会の変革に対応するため、と言っていまが、一番大きな変革とは、この人工知能問題と推測されます。人工知能が得意とする分野、知識の蓄積や処理では人間は必要とされません。
人間独自の思考力、判断力、表現力に秀でた人が得点できるテストにし、高等学校の学習方法が、そうした方向を向くことで、20世紀型ではない未来型人間を育成することにつなげていく、そうした流れを作ろうとしているのです。
〈参考〉
中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会
次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ
第1部 学習指導要領等改訂の基本的な方向性
2.2030年の社会と子供たちの未来(予測困難な時代に、一人一人が未来の創り手となる)
〇こうした現状にある子供たちには、現在と未来に向けて、自らの人生をどのように拓 ひら
い ていくことが求められているのか。また、新しい時代を生きる子供たちに、学校教育は 何を準備しなければならないのか。〇とりわけ最近では、第4次産業革命ともいわれる、進化した人工知能が様々な判断を 行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代の到来が、 社会や生活を大きく変えていくとの予測がなされている。“人工知能の急速な進化が、人 間の職業を奪うのではないか”“今学校で教えていることは時代が変化したら通用しなく なるのではないか”といった不安の声もあり、それを裏付けるような未来予測も多く発 表されている。
- 子供たちの65%は将来、今は存在していない職業に就く(キャシー・デビッドソン氏(ニューヨーク市 立大学大学院センター教授)) との予測や、今後10年~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可 能性が高い(マイケル・オズボーン氏(オックスフォード大学准教授)) などの予測がある。
- また、204 5年には人工知能が人類を越える「シンギュラリティ」に到達するという指摘もある。
〇人工知能がいかに進化しようとも、それが行っているのは与えられた目的の中での処 理である。一方で人間は、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っていくの か、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかという目的を自ら考え出すこ とができる。多様な文脈が複雑に入り交じった環境の中でも、場面や状況を理解して自 ら目的を設定し、その目的に応じて必要な情報を見いだし、情報を基に深く理解して自 分の考えをまとめたり、相手にふさわしい表現を工夫したり、答えのない課題に対して、 多様な他者と協働しながら目的に応じた納得解を見いだしたりすることができるという 強みを持っている。
〇このために必要な力を成長の中で育んでいるのが、人間の学習である。これから子供 たちが活躍する未来で一人一人に求められるのは、解き方があらかじめ定まった問題を 効率的に解いたり、定められた手続を効率的にこなしたりすることにとどまらず、直面 する様々な変化を柔軟に受け止め、感性を豊かに働かせながら、どのような未来を創っ ていくのか、どのように社会や人生をよりよいものにしていくのかを考え、主体的に学 び続けて自ら能力を引き出し、自分なりに試行錯誤したり、多様な他者と協働したりし て、新たな価値を生み出していくことであると考えられる。そのために必要な力を、子 供たち一人一人が学ぶことで身に付け、予測できない変化に受け身で対処するのではな く、主体的に向き合って関わり合い、その過程を通して、自らの可能性を発揮し、より よい社会と幸福な人生の創り手となっていけるようにすることが重要である。「次期学習指導要領等に向けたこれまでの審議のまとめ」より一部抜粋(平成28年8月26日発表)