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何十年もりんご農家を続けてきた両親ですが、90歳が間近に迫り、もうこれ以上手広くりんご栽培をすることはあきらめました。そのまま子供世代に引き継ぐということが難しいということは、当然わかっています。今はどう縮小していくかを家族で考えています。
じいさんばあさん 兼業農家の人生と専業農家の人生と
じいさんばあさん自身、ずっと専業農家だったわけではありません。高度経済成長期には、農業よりももっと高収入の仕事があふれていましたので、収入が不安定な農業に頼るのではなく、会社勤めもする、いわゆる兼業農家として農業を続けていました。
ですから、二人ともそれなりに厚生年金加入期間があります。専業農家としてやっていたら、国民年金だけですから、本当に大変になっていたと思います。
バブルがはじけた頃、じいさんは早期退職制度により、少し定年より早めに退職し、以来専業農家としてやってきました。考えてみると、じいさんの成人してからの人生のうち半分以上は専業農家。出荷してきた作物は、主に、米、りんご、ぶどうなど。1年半前まで出荷し、稼いでいたわけですから驚きです。
農業はお金になりません。・・・でも計算してみたら85過ぎてもちょっと稼げていた・・
じいさんが倒れてしまったので、代わりに確定申告をする際、代理で入出金をデータ化していったのですが、人に頼む部分で人件費がかかっていたのと肥料や農薬が高額だっため支出が大きくて、ちょうどプラマイゼロな感じでした。それでも、自家消費分とか贈答用に使っている分を考えると(それもしっかり計算して確定申告しています)少しはプラスになっていて、80歳をすぎても、年金だけではなく、現金を稼げていたことに心底驚きました。ですから、じいさんは誰かの被扶養者にならず、自分の力で生きているという意識がとても強いです。
引き継ぐ農地があるということと仕事として引き継げるかということは別
農家の娘、しかも長女として生まれてきたということで、「跡取り」ということを強く意識させられてきました。そもそもここに戻ってきたのは、そういう刷り込みがあったからだと思うのです。
見よう見まねで何となく手伝ってきて、半世紀。例えば、りんごについては任せて!と言えればカッコいいのですが、理想には程遠く、実際は素人です。
他の仕事を持っている今、跡取りだからと言って受け継げるような簡単なものではありません。もし兼業農家を決意したら、余暇は一切なくなります。無理です。しかも、それは両親も期待していません。
だから、自家用として何本か残すものの(自分たちの楽しみや親せきに配って歩くだけの栽培はするということで)、残りの土地は、木を切り倒してヒノキを植林してしまうことにしました。
これは、今年始めたのではなく、もう何年も前から進めてきていることです。スギを植林したり、今回のようにヒノキを植林したり。まわりの畑もその流れになっています。
スギ花粉が気になるので、あまり杉ばかりを植林するのは気が引ける、と言って今回はヒノキ。とは言っても、杉は家を作る上で、大切な樹木。
杉の木の家に住んでいる人は多いのではないでしょうか。我が家もあちこちに杉が使われています。
とにかく、踏ん切りをつけなければなりません。じいさんばあさんのこれから予測される体調のことも考えました。
まわりの農家から、あんなに実をつけている木を切ってしまうのはもったいない、と言われました。でも、逆にそれだからこそ、手を入れられないという部分もあり・・・。
りんごは、とにかく手入れが大変です。手を入れなければすぐ病気になったり、虫や取りに食べられたりしてしまいます。大きな実をならして、収穫するまで、もっと言うと、売ってお金になる「商品」にするまでに、どれだけ手を入れなければならないのか、ずっとそばで見ていてため息が出ます。
3年ほど前、出荷直前に、台風が来ました。傷だらけになって、売り物になりませんでした。農業収入は、その時々の相場によります。安定したものではありません。全滅ということもあるのです。
おいしいものを作って、みんなに喜んでもらえるから作り続ける、そんな善意で農業を続けることは難しいです。労働賃金にするとりんご農家の場合、時給300円程度にしかなっていないとか。それさえ、そんなになっているかなあ、と朝から晩まで働く農家を見て思います。
最近は六次産業と言って、一次産業(農業)×二次産業(製造)×三次産業(販売)で、農作物をそのまま販売するのではなく、その農作物を加工し、付加価値を付けたものを売って収入を増やそうという試みがあちらこちらで行われています。
例えば、ぶとう。ぶどうをワインにして売れば、原材料の何十倍もの収入になります。ただそのためには、知識(技術を持つ人)が必要ですし、加工する工場も必要です。大掛かりになります。それでも六次産業を応援したくなります。
林業も大事。今や日本は木材自給率33.3%!5年連続上昇中
今回は仕方なく、ではありますが、実は林業は大切です。森林税を収めている方もいらっしゃるでしょう。
林野庁より発表された「平成27年木材需給表」によると、木材自給率は33.3%になりました。5年連続の上昇です。我が家を建てた十数年前は20%を切っていましたので、その上昇ぶりがはっきりしています。伐採が進んでいるのです。
ちなみに、じいさんは、今回の植林場所とは別に、管理すべき山も所有しています。それをどうするかも本気で頭が痛い。個人での伐採はほとんど不可能だからです。
国産木材を使う流れで、個人所有の山の木をどう管理していくか、国や地方公共団体の方に考えていただき、森林の良い循環が起こるといいなと思います。